コラム

腰椎椎間板ヘルニアとは その1

掲載日 : 2025/09/22

腰椎椎間板ヘルニアの症状・原因・治療法を解説 ― 日常生活との関わりと予防の工夫

  はじめに
「腰の痛みが取れない」「お尻から足にかけてしびれる」「長時間立っているとつらい」――こうした症状に悩んでいる方は少なくありません。
腰椎椎間板ヘルニアは、背骨のクッションである椎間板が変性して飛び出し、神経を圧迫することで起こる病気です。比較的若い世代から中高年まで幅広く発症し、日常生活や仕事に大きな影響を与えることもあります。
この記事では、腰椎椎間板ヘルニアについて 症状・原因・診断・治療・予防 を整理し、受診の目安や生活上の注意点についても解説します。

  腰椎椎間板ヘルニアとは?
背骨(脊椎)は「椎骨」という小さな骨が積み重なってできています。その間には「椎間板」というクッションがあり、衝撃を吸収する役割を果たしています。
椎間板は「髄核(ゼリー状の中心部分)」と「線維輪(外側の硬い組織)」からなりますが、加齢や負担の蓄積によって線維輪が弱くなると、髄核が飛び出してしまいます。これが「椎間板ヘルニア」です。
腰椎(腰の部分)で発生する場合を「腰椎椎間板ヘルニア」と呼び、坐骨神経痛や腰痛の原因として広く知られています。

 主な症状
症状は突出した椎間板がどの神経を圧迫するかによって異なります。
  •腰痛:動作や姿勢で悪化しやすい。
  •坐骨神経痛:お尻から太もも、ふくらはぎ、足先にかけて放散する痛み。
  •下肢のしびれや感覚異常:ピリピリ・ジンジンとした感覚や感覚鈍麻。
  •筋力低下:足首が上がらない、つまずきやすい。
  •排尿・排便障害(重度の場合):馬尾神経が圧迫されると、膀胱や直腸の機能に障害が出ることもある。
軽度の腰痛から始まり、進行すると下肢の神経症状が強くなるケースが多いため、早めの診察が大切です。

 発症の原因
1.加齢による変化
椎間板は年齢とともに水分を失い、弾力を失います。その結果、線維輪が破れやすくなります。
2.姿勢や生活習慣
  •長時間の座位(デスクワーク、運転)
  •重い物を持ち上げる作業
  •猫背や腰に負担のかかる姿勢
これらの習慣は椎間板に強い圧力をかけ、発症リスクを高めます。
3.外傷やスポーツ
重量挙げやコンタクトスポーツなど腰に負担のかかる運動、または転倒・事故なども要因になります。
4.遺伝的要因
体質的に椎間板が弱い人もおり、若年でも発症するケースがあります。

 診断方法
腰椎椎間板ヘルニアが疑われる場合、医師は以下の手順で診断を行います。
1.問診:症状の経過や日常生活での困りごとを確認。
2.神経学的診察:感覚や筋力、反射を評価。
3.画像検査:
  oX線検査:骨の変形や配列を確認。
  oMRI検査:椎間板の突出や神経圧迫の有無を詳細に評価。
特にMRI検査は診断に有用で、手術の適応を判断する上でも重要です。

 治療法
腰椎椎間板ヘルニアの治療は大きく分けて「保存療法」と「手術療法」があります。
保存療法(まず優先される治療)
  •薬物療法:消炎鎮痛薬、神経障害性疼痛薬など。
  •理学療法:ストレッチや腰回りの筋肉を鍛える運動、温熱療法。
  •神経ブロック注射:痛みや炎症を和らげる。
多くの方は保存療法で症状が改善します。数週間〜数か月で日常生活に支障がなくなる場合もあります。
 手術療法
保存療法で改善がみられない場合、または神経症状が強い場合に検討されます。
  •椎間板摘出術:突出した椎間板を除去。
  •内視鏡下ヘルニア摘出術:小さな切開で行う低侵襲手術。
  •固定術や人工椎間板置換術:必要に応じて選択されます。
最近は低侵襲手術の導入により、体への負担が軽減されています。

 生活習慣と予防
腰椎椎間板ヘルニアは再発する可能性もあるため、予防が大切です。
  •正しい姿勢を保つ:椅子は深く腰掛け、背筋を伸ばす。
  •長時間同じ姿勢を避ける:1時間に1回は立ち上がり、体を伸ばす。
  •腰にやさしい動作:重い荷物を持つときは膝を曲げ、腰をひねらない。
  •筋力強化:腹筋や背筋を鍛えることで腰を支える力を高める。
  •適切な睡眠環境:硬すぎず柔らかすぎないマットレスを使用。

 受診の目安と専門医療機関
次のような症状がある場合は、早めの受診が推奨されます。
  •足に強いしびれや痛みがある
  •筋力低下で歩行が困難
  •排尿・排便に異常がある
脊椎疾患を専門に扱う病院では、MRIを用いた詳細な診断から保存療法・手術療法まで幅広く対応しています。経験豊富な医師による治療は、症状改善と再発予防につながります。
※本記事は一般的な医療情報であり、診断や治療を保証するものではありません。症状がある場合は必ず医師にご相談ください。

 まとめ
腰椎椎間板ヘルニアは、腰痛や坐骨神経痛の原因となり、生活に大きな影響を与える病気です。
  •腰や足の痛み・しびれが続く場合は要注意
  •MRI検査で正確な診断が可能
  •多くは保存療法で改善するが、必要に応じて手術が行われる
  •姿勢や生活習慣の改善が予防につながる
腰の症状に悩まれている方は、早めに脊椎専門の医療機関へ相談されることをおすすめします。