コラム

BKFとは

掲載日 : 2025/08/15

BKP(バルーンカイフォプラスティ)で高齢者の背骨の痛みを改善

― 骨粗しょう症による圧迫骨折の最新治療 ―
「背中や腰が急に痛くなった」「少しぶつけただけなのに背骨が折れてしまった」――。
高齢になると骨がもろくなり、骨粗しょう症による圧迫骨折を起こす方が増えます。
その中で近年注目されているのが、**BKP(Balloon Kyphoplasty:バルーンカイフォプラスティ)**という最新の脊椎手術です。
BKPは、潰れてしまった背骨の形を整え、骨セメントで固定することで、痛みを早期に軽減し、動ける生活を取り戻すことができる治療法です。
ここでは、高齢者に多い圧迫骨折の特徴、従来治療との違い、BKPの流れや効果、再発予防まで解説します。

◆高齢者に多い「圧迫骨折」とは
圧迫骨折は、背骨(椎体)が押しつぶされて変形する骨折です。
特に骨粗しょう症で骨がもろくなっている高齢者は、転倒や尻もちだけでなく、くしゃみや重い物を持ち上げる動作でも起こることがあります。
圧迫骨折の主な特徴
  •突然の背中や腰の痛み
  •動くと痛みが増す
  •前かがみの姿勢になりやすくなる
  •時間が経つと身長が低くなる
中には明らかな怪我をしていないのに骨折している**「いつのまにか骨折」**も多く、発見が遅れると骨の変形が進行し、慢性的な腰痛や姿勢の悪化につながります。

◆従来の治療とその限界
これまで圧迫骨折は、**保存療法(安静、コルセット、薬)**が主流でした。
骨は数か月かけて自然に癒合しますが、その間は強い痛みのために動けず、長期の寝たきりになることもあります。
寝たきりが続くと、筋力低下や血栓症、誤嚥性肺炎、認知機能の低下などのリスクが高まります。

◆BKP(バルーンカイフォプラスティ)とは
BKPは、背骨の圧迫骨折に対して行う低侵襲(体への負担が少ない)手術です。
潰れた椎体にバルーンを挿入し、膨らませて骨の形を整えた後、医療用骨セメントを充填して固定します。
特徴
  •1時間程度の短時間手術
  •小さな切開(1cm以下)で行える
  •局所麻酔や全身麻酔の選択が可能
  •高齢者でも比較的安全に行える

◆BKPの手術の流れ
 1.麻酔(局所または全身)を行う
 2.背中から細い管を圧迫骨折した椎体に挿入
 3.バルーンを入れて膨らませ、骨の高さを回復
 4.バルーンを抜き取り、空いた空間に骨セメントを注入
 5.固まるまで数分待ち、固定完了
多くの場合、翌日から歩行可能で、入院期間は3〜7日程度です。

◆BKPのメリット(高齢者にとっての利点)
  •痛みが早く軽減し、動き出しが早い
  •傷口が小さく、出血も少ない
  •長期の安静を避けられ、寝たきりによる合併症予防になる
  •骨の変形をある程度防げるため、姿勢の悪化を抑えられる

◆BKPの注意点
BKPは万能ではなく、以下のような注意点もあります。
  •古い骨折(数年以上前)は効果が出にくい
  •骨粗しょう症の根本的な改善にはならない
  •骨セメントによる合併症(稀にセメント漏出など)がある
  •適応できないケースもある(感染症、腫瘍性病変など)
そのため、「新しい骨折で強い痛みがある」場合に特に有効とされます。

◆BKP後の生活と再発予防
BKPで痛みが改善しても、骨粗しょう症の治療を続けないと再発します。
再発防止には以下が重要です。
 1.骨粗しょう症治療薬の継続(ビスフォスフォネート製剤、デノスマブ、テリパラチドなど)
 2.栄養管理(カルシウム・ビタミンD・タンパク質の摂取)
 3.転倒防止(室内の段差解消、滑り止めマットの設置)
 4.筋力維持(軽い運動やリハビリで体幹・下肢筋を鍛える)

◆当院のBKP治療の特徴
  •10年以上のBKP手術実績
  •高齢者に配慮した短時間・低侵襲手術
  •骨粗しょう症外来との連携で再発予防までサポート
  •理学療法士・作業療法士によるリハビリ体制
  •ご家族への退院後ケア指導も実施

◆まとめ
BKPは、骨粗しょう症による圧迫骨折で強い痛みを抱える高齢者にとって、
「早く動けるようになる」ための有力な治療法です。
痛みを我慢して寝たきりになってしまう前に、脊椎手術専門病院で相談することが大切です。