コラム

家族のためのBKP

掲載日 : 2025/08/15

BKP(バルーン椎体形成術)― 家族だからこそ気づける、高齢の親の背骨の危険信号と最新治療

1. 高齢のご家族が「急に背中を丸めて歩くようになった」…それ、骨折のサインかもしれません
高齢の親御さんや祖父母が、ある日から急に背中を丸めて歩くようになったり、「腰が痛い」「背中が痛い」と訴えるようになった経験はありませんか?
その症状、単なる「加齢」や「腰痛」ではなく、骨粗しょう症による脊椎圧迫骨折の可能性があります。
特に高齢者は、転倒や重い物を持った衝撃だけでなく、くしゃみや寝返りの衝撃だけで骨折することがあります。このような骨折は「いつのまにか骨折」とも呼ばれ、本人が骨折に気づかないことも多いのです。

2. 骨粗しょう症と脊椎骨折の怖い関係
骨粗しょう症は、骨密度が低下し骨がもろくなる病気です。
特に脊椎は全身の体重を支えるため、弱くなると簡単に潰れてしまいます。
一度脊椎が潰れると、背中が曲がる(円背)・身長が縮む・呼吸がしづらくなるといった症状が現れ、生活の質(QOL)が大きく低下します。
さらに怖いのは、**一度骨折すると、その上下の骨も連鎖的に折れやすくなる(ドミノ骨折)**ということです。

3. 家族が気づくべき「骨折のサイン」
ご家族が注意してほしいポイントは以下です。
  •以前より背中が丸くなった
  •急に歩く速度が遅くなった
  •腰や背中を押さえていることが増えた
  •座っているとき、痛そうに体をずらす
  •身長が数センチ縮んだ
こうした変化を「年のせい」と思って放置してしまうと、症状は進行し、寝たきりになるリスクが高まります。

4. BKP(バルーン椎体形成術)とは?
BKP(Balloon Kyphoplasty)は、骨粗しょう症による脊椎圧迫骨折の治療法の一つで、小さな傷から特殊なバルーンを骨の中に入れ、つぶれた骨を押し上げて元の形に近づけ、骨セメントで固定する方法です。
特徴
  •切開は数ミリ〜1cm程度
  •手術時間は1時間前後
  •全身麻酔または局所麻酔で実施
  •術後は早ければ当日から歩行可能
  •痛みの軽減が早く、回復がスムーズ

5. BKPのメリット ― 家族の負担も軽減
BKPの最大の魅力は、痛みが早く和らぎ、生活動作が改善しやすいことです。
これは患者本人だけでなく、介護をするご家族にとっても大きなメリットです。
  •介助の回数が減る
  •食事・入浴・トイレ動作が自立しやすくなる
  •寝たきりによる褥瘡(床ずれ)や肺炎の予防にもつながる

6. 放置するとどうなる?
BKPが適応になる骨折は、発症から早期のほうが治療効果が高いといわれています。
放置してしまうと、骨が変形したまま固まり、BKPでは矯正が難しくなります。
その結果、背中の変形が固定化し、内臓が圧迫されて食欲低下や呼吸不全につながることもあります。

7. 手術後の生活と予防
BKP後も、再骨折を防ぐための骨粗しょう症治療は欠かせません。
予防のポイント
  •骨密度を定期的に測定
  •ビタミンD・カルシウムの摂取
  •適度な筋力トレーニング
  •転倒予防(家の段差・照明の改善)
家族がサポートすることで、再発リスクを大きく下げられます。

8. 家族としてできること
  •痛みや姿勢の変化を見逃さない
  •早期に整形外科や脊椎専門病院を受診
  •手術や治療法の情報を集め、本人が安心できる環境を作る
  •リハビリや通院に付き添う

◆まとめ
BKPは、高齢者の脊椎圧迫骨折に対して短期間での回復が期待できる治療法です。
しかし、その効果を最大限に生かすには、ご家族が早期に異変に気づき、専門医に相談することが重要です。
高齢のご家族の「姿勢の変化」や「動作の遅れ」を感じたら、迷わず医療機関へ。
その一歩が、痛みのない生活と介護負担の軽減につながります。