脊柱管狭窄症 その2
掲載日 : 2025/08/19
~原因・症状・治療法を解説~
脊柱管狭窄症とはどんな病気か
脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)は、中高年から高齢者に多くみられる腰の病気のひとつです。
脊柱管とは、背骨の中を通る神経のトンネルを指します。この通り道が加齢や変形などにより狭くなることで、神経や血管が圧迫され、腰や足に症状が出るとされています。
日本では腰痛や下肢のしびれで整形外科を受診する患者さんの中で、この病気と診断されるケースが少なくないと報告されています。特に70歳以上の高齢者では「歩きにくさの原因」として考えられる疾患のひとつです。
脊柱管狭窄症の主な原因
原因には以下のようなものが挙げられます。
1.加齢による変化:椎間板の厚みが減少したり、関節(椎間関節)が変形することで脊柱管が狭くなる場合があります。
2.靭帯の肥厚:脊柱管の後方にある黄色靭帯が分厚くなり、神経の通り道を圧迫します。
3.椎間板ヘルニアの合併:椎間板ヘルニアが同時に生じることで、圧迫が強まることもあります。
4.すべり症:背骨がずれる「腰椎すべり症」を伴うと、狭窄が進みやすいといわれています。
脊柱管狭窄症の主な症状
神経が圧迫されることで、次のような症状が現れることがあります。
•腰痛:慢性的な鈍い腰の痛み
•下肢のしびれ・痛み:太ももやふくらはぎにかけて起こることが多い
•間欠性跛行(かんけつせいはこう):歩行中にしびれや痛みで立ち止まり、休むと再び歩けるようになる特徴的な症状
•下肢の筋力低下:進行すると足に力が入りにくくなる場合がある
•排尿障害:重度では膀胱や直腸の神経が影響を受け、排尿に異常が出ることもある
脊柱管狭窄症の診断
診断は一般的に以下の流れで行われます。
1.問診:症状の経過や歩行距離、腰痛の有無などを確認します。
2.身体診察:下肢の感覚・筋力・反射を調べます。
3.画像検査:
oレントゲンで骨の変形を確認
oMRIで神経圧迫の有無を評価
oCTで骨の形態を詳細に把握
これらを組み合わせ、総合的に診断されます。
脊柱管狭窄症の治療法
治療は大きく「保存療法」と「手術療法」に分けられます。
1.保存療法
症状が軽度〜中等度の場合、まず保存療法が行われることが多いです。
•薬物療法:消炎鎮痛薬や血流改善薬、神経障害性疼痛薬などが用いられることがあります。
•理学療法:ストレッチや筋力トレーニングによって腰の安定性を高める試みが行われます。
•ブロック注射:神経の炎症や痛みをやわらげる目的で行われることがあります。
•装具療法:コルセットを用いて腰を支える方法があります。
2.手術療法
保存療法で十分な改善がみられない場合や、歩行・排尿障害が強い場合には手術が検討されることがあります。
•椎弓切除術(開窓術):圧迫している骨や靭帯を一部取り除き、神経の通り道を広げる方法。
•内視鏡下手術:小さな切開で内視鏡を用いる手術。身体への負担が少ないとされます。
•固定術:背骨の不安定性がある場合、スクリューなどで固定する方法。
脊椎手術専門病院での治療の特徴
脊椎を専門とする病院では、次のような体制が整えられている場合があります。
•脊椎分野を専門とする医師が診療にあたっている
•内視鏡やナビゲーションシステムなどを導入している施設もある
•術後のリハビリまで一貫してサポートできる体制がある場合もある
脊柱管狭窄症は患者さんによって神経の圧迫部位や症状が異なるため、個別の状態に応じた治療方法が検討されます。
脊柱管狭窄症の予防
完全に防ぐことは難しいとされていますが、次のような生活習慣が進行予防に役立つといわれています。
•正しい姿勢を心がける
•ウォーキングやストレッチなどの運動を継続する
•体重を適正に維持する
•腰に負担の少ない動作を意識する
まとめ
脊柱管狭窄症は、腰や足の痛み・しびれ・歩行障害を引き起こす代表的な病気のひとつです。
高齢化に伴い患者数は増えており、生活の質に影響を与えることが知られています。
保存療法で十分な改善が得られない場合には、手術が検討されることもあります。治療方針は症状や全身状態により異なるため、専門の医師に相談し、自分に合った方法を検討することが大切です
